中国人民大学2005年9月~西辻健一郎さま~

西辻健一郎さんは2004年8月~2005年8月まで留学準備として当校で北京語を勉強されておりました。
先日、留学先の北京からレポートをいただきました。
現地の気候から、テレビ番組や、さらには発音のコツまで、興味深い内容のものが盛りだくさんです。

1.北京の空気

2.庙会 miào huì

3.中国のテレビ番組

4.現地の中国語

5. 中韓関係(文化面)

6.「活力門」事件

7.黄砂&柳樹の花

8.受験戦争

9.歴史を知る

10.北京今昔

 

5.中韓関係(文化面)

  3.中国のテレビ番組の項目でも少し触れましたが、留学当時の中国では、日本に負けず劣らず、あるいはそれ以上の「韓流」ブームが起こっていました。とにかく韓国の文化、ファッション、ドラマなどのエンターテイメントに対する評価が高く、「洗練されて」いて「都会的・先進的」だとされています。
  ドラマでは、チャン・ナラ主演の「明朗少女成功記」、イ・ドンゴン、キム・ジョンウン主演の「パリの恋人」あたりがトレンディードラマでは盛んに放送されていました。そして・・・日本でも爆発的人気のでた「チャングムの誓い」も、やはり人気でした。(中国での題は「大長今」。なお「長今」という漢字を韓国語読みしたのが「チャングム」)これらのドラマのDVD、VHSはよくお店で見かけたので、興味のある方は旅行の際に購入してみてはいかがでしょうか。
  音楽も人気が高く、こちらでの交流は最近の「韓流」以前から続いているようです。テレビでは「中韓歌謡コンサート」なるものも定期的に開かれていて、両国の有名歌手が豪華共演を果たします。しかもこれは、中国国営放送CCTVと、「韓国のNHK」とも言うべきKBSの合同企画というから、すごいものです。中国と日本のテレビ局の間でも、こういう企画が実現し、そうした動くが広がっていく日が来るといいですね。


写真11.中韓歌謡コンサート
  年末年始の特番として放送されていたと記憶。留学時点(2005~06)で第7回とあるので、かなり歴史があると思われる。

写真12.コンサートのセット
  舞台の両側に「CCTV」「KBS」という大きな文字が映し出されています!

写真13.コンサート中継の一場面
  確か韓国側代表の歌手だったと思う・・・のだけど名前がわかりません。ごめんなさい。

 

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6.活力門事件

 さて、この活力門とは何でしょうか?これを知っている人はかなり「通」な人にちがいありません!これは「ライブドア」の中国語訳なんです。とはいえ、ライブドアを知る中国人は当初ごくごく少数で、おそらく日本の時事通の人か金融に興味のある人しか、この言葉を見かけることはなかったでしょう。そう、あの日までは・・。

 2006年1月16日、東京地検特捜部は、六本木ヒルズのライブドア本社や堀江貴文の自宅など関係各所の捜査に踏み切りました。日本ではこの事件に関し、相当な社会的反響があったと聞いていますが、その様子を私が知ったのは、中国のニュース番組を通じてでした。中国で突然ライブドアのことが、しかもものすごい情報量を伴って報道されたので、私は「これはただ事ではない」と思い、その後インターネットを通じてこの事件の情報を集めたのを覚えています。

 中国のテレビでの論調は①堀江氏を日本の「ビル・ゲイツ」と見立て、両者を比較し、結論として堀江氏には技術的裏づけに乏しく、一種の成金長者的な側面がある可能性が高いと分析した②この事件の前提に、日本のIT・金融システムがアメリカ的なものに変り、一種のバブルが起こっていることがあることを指摘した③そしてこの事件が、日本のそのIT・金融バブルに冷や水を浴びせる結果になるだろうと予測した。

 これらの分析は冷静でなかなかに鋭い。また説明内容も丁寧で、私はテレビを見ていて感心してしまったことを覚えている。しかし最終的にテレビ(つまり権力者サイド)が言いたかった一番大事なことは、きっと以下の点にあったと思う。つまり、日本の例を引き合いに出して、「現状の中国でのIT・金融業界の急成長に人民が浮かれないよう諭す」ということだ。

中国の急速な成長は、猛烈であると同時に脆い部分がある。そして政府は、その弱い部分が深刻なものとならないよう、必死で調整、管理をしている。だからこそライブドア事件を、客観的に、しかし丁寧に、ああして報道していたのではないだろうか。

この「ライブドア事件」の報道に関して言えば、「それみたことか」と感情的な袋叩きをした日本の報道の仕方よりも、中国側の報道の仕方の方が一枚上手だったと、私は思っている。

写真14「活力門」事件
  ライブドアの本社受付の様子が映っています。なおこれ以降の写真は全てCCTV4(中央電視台国際頻道)の番組「今日関注」からとったものです。

 

 

写真15「活力門」事件解説
  解説委員が、今回の事件の背景やその意味・教訓などを述べていました。その他、写真は残っていませんが、堀江氏といろんな政治家との関係や対立なども細かく解説しており、非常に感銘を受けたことをよく記憶しています。この問題は、中国にとって「対岸の火事」とはとても思えなかったからこそ、ここまで詳しく調べ、それを報道したのでしょう。

 

 

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